免疫力の話(終わり)

寝ても起きても光の奔流は続いた。
数日すると光に音が混じり始めちょっと辛くなった。
ふと気が付くと身体に変化が生じてきた。
まず腕や足の毛が抜けているのに気が付いた。
それと共にいろいろなイメージが浮かんでは消えた。
頭頂の骨が少し隆起してきた。
時には底なしの深淵をのぞき込んでいるような感じもした。
この時、カナダに移民していった師傳のことが思い出された。
一緒にサウナに行った時、師傳の身体は少年のようで
体毛がなく男性というより中性的な特徴だった。
仏像の多くがそんな性を超越した姿であるようにだ。


身体の変化は続いて止まらないようで、当時、相談する人が
いなかったワシは先行きに大きな不安が生じた。
浮かんでくるイメージではどうも彼岸に向かって
進んでいるようで人が人でなくなるという恐怖感を覚えた。
覚悟の問題かもしれないがワシにとってはまだ早過ぎる気がした。
何とか今の状態を止めることができないか模索し始めた。
それから香港の仏教や道教の施設へ行ったが参考になる情報は得られず
次に古書店を軒並み歩いて古い文献を探してみた。
何日目かにやっとそれらしき記述を見つけた。
その内容については明らかにできないが
とにかく書かれていたことを毎日続けていると
光の奔流が止まってくれた。
今にして思えば、その一線を越えておけば良かったかなとも思う。
しかしあの時感じた言いようのない恐怖感は
若かったワシにとっては耐えられるものではなかったのだろう。
そんなこともあったがこうした経験の後、
ワシはあらゆる感染症、風邪やインフルエンザ、最近の
新型コロナなどに罹らない免疫力が付いた。
修行は中途半端になったがそれなりの成果はあったわけだ。